
産科
産科はお産という視点から、出産に伴う母体の変化、子宮・卵巣など女性性器の異常、さらに子宮内の胎児の状態をみる診療科です。妊婦健診では、体重や血圧の測定、超音波検査、尿検査、感染症検査、血糖値検査、羊水検査などを通じて、母体、胎児ともに問題がないかを定期的に確認します。ときにみられる、妊娠悪阻(にんしんおそ:つわりが悪化した症状)や、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、羊水過多症・過少症といった、妊婦特有の病気にも迅速に対応します。保健指導では辛いつわりへの対処法や生活上の注意点、マタニティーブルーへの対応といった精神面のサポートも行います。
すべての妊婦さんにとってお産は、赤ちゃんを授かったという喜びを感じる一方、身体面や生活面で不安を感じるものです。当院では健康的で、不安なく出産を迎えられるよう、一人ひとりに寄り添った医療でサポートいたします。
生理が遅れたり、軽い吐き気など体調が変化していたり、妊娠検査薬で陽性反応が出たなど、妊娠したかな?と思ったら、ぜひ早いうちにご来院ください。
初めての診察では、問診と尿検査を行ったうえで内診・超音波検査を行い妊娠の判定をさせていただきます。
妊娠初期は妊娠1~4ヶ月の時期です(妊娠中期は妊娠5~7ヶ月、妊娠後期は8~10ヶ月)。
妊娠初期の症状はおよそ妊娠3~5週あたりで現れ始めます。0~3週では基礎体温の高温層が続いたり、身体のだるさや熱っぽさを感じたりします。4~7週では予定月経が遅れる、乳白色のおりものが多く出るといった症状があります。8~11週では便秘気味になったり、足の付根がつったりします。腰が重たく感じるようになることもあります。
妊娠初期は赤ちゃんの中枢神経や心臓といった重要な器官が形成されるとても大切な時期です。この時期は葉酸を含む食物の摂取や体を温めることを心がけてください。適度に体を動かし、血流の低下を予防することも大切です。また、喫煙、飲酒、カフェインの摂取は避けましょう。
胎内の赤ちゃんはめざましく発育し、それに伴いお母さんの身体も大きく変化してきます。妊婦健診では胎児の発育状態を診る超音波検査とともに、妊娠週に応じた様々な検査で、お母さんと赤ちゃんの健康をチェックします。
健診の際は、日常生活や食事のこと、日常での疑問や不安に思うことなど、何でも気軽にご相談ください。
妊娠22週未満で妊娠が終了することを流産といいます。特に妊娠12週未満の早期流産が多く、自然流産のほとんどがこの時期に起こります。その原因で最も多いのが、赤ちゃんの染色体の異常です。これは受精した時に決まります。そのため、妊婦さんの仕事や運動などが原因で流産したということはほとんどありません。
切迫流産とは、流産が起きてしまう手前の状態のことです。妊娠22週未満で出血や軽い腹痛があるが、胎児の心拍が確認され、子宮口が開いていない状態を指します。少量の性器出血(茶色〜赤色)や下腹部の張りや軽い痛みなどがみられ、胎動はまだ感じない時期の場合が多いです。
切迫流産の根本的な治療法はなく、安静にすることが基本となります。切迫流産と診断されても、約90%は妊娠を継続できるといわれています。不安になるかもしれませんが、医師の指示を守り、安静に過ごすことが大切です。
早産とは正期産(妊娠37週0日から妊娠41週6日までの出産)より前の出産のことで、日本では妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産を早産と呼びます。早産では赤ちゃんの体重は500g前後で長期間の新生児医療(新生児集中治療室での治療)が必要となります。また、早く生まれた赤ちゃんほど、のちに重篤な障害が出てくる可能性が高くなります。ですから、早産にならないように妊娠中は定期的な健診を受けて、早産になりやすい状況の早期診断と予防が重要になります。
切迫早産は早産の一歩手前で、子宮収縮(お腹のはりや痛み)が規則的・頻回に生じ、子宮の出口から赤ちゃんが出てきそうな状態をいいます。切迫早産の治療では、子宮収縮を抑える子宮収縮抑制薬を使用したり、原因の一つである細菌による感染の疑いがあれば、抗菌薬を使用したりすることもあります。
正常よりも低い位置(膣に近い側)に胎盤が付着し、胎盤が子宮の出口(内子宮口)を覆っている状態をいいます。通常、赤ちゃんは胎盤より先に出てきますが、前置胎盤では胎盤が赤ちゃんよりも下(膣)側あるため、先に胎盤から出てしまいます。そうなると胎盤が出る時に大出血を起こし、赤ちゃんは胎盤が出た時点で胎盤からの栄養が途切れます。さらに子宮内にいる赤ちゃんは呼吸もできない状態になってしまいます。こうしたリスクがあるため前置胎盤の場合には、ほぼ帝王切開分娩となります。ただし、妊娠早期に超音波検査で前置胎盤と診断されても、妊娠が進むにつれて子宮が大きくなると、徐々に胎盤が上にあがり、最終的に前置胎盤でなくなることも少なくありません。ですから、妊娠中期頃までの仮の前置胎盤は過度な心配はいりません。
妊娠中にはじめて発症した糖代謝異常を妊娠糖尿病といいます。お母さんが高血糖であると、お腹の赤ちゃんも高血糖になり、様々な合併症が起こり得ます。お母さんには、妊娠高血圧症候群、羊水量の異常、肩甲難産、網膜症・腎症およびそれらの悪化のリスクがあり、赤ちゃんには、流産、形態異常、巨大児、心臓の肥大、低血糖、多血症、電解質異常、黄疸などのリスクがあります。特に肥満や糖尿病の家族歴のある方、高齢妊娠、巨大児出産既往のある方などはハイリスクとされていますので、必ず検査を受けるようにしてください。
妊娠中に高血圧を発症した場合をいいます。妊娠以前から高血圧を認める場合や妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠、妊娠20週以降に高血圧のみを発症する場合を妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿(肝機能障害・腎機能障害・神経障害・血液凝固障害、赤ちゃんの発育不良などを含む)を認める場合は、妊娠高血圧腎症に分類されています。
この病気は、妊婦さん約20人に1人の割合で起こるといわれており、早発型と呼ばれる妊娠34週未満で発症した場合、重症化しやすい傾向があります。妊婦健診をきちんと受診し、適切に周産期管理を行っていきましょう。
マタニティーブルーは、出産後の女性の30〜50%が経験するといわれています。産後数日から2週間程度のうちに、涙が止まらない、イライラ、落ち込みといったちょっとした精神症状が出現します。人によっては、情緒不安定、眠れない、集中力がなくなるといった症状も出ることがあります。多くは一過性で、産後10日程度で軽快しますので、過度に心配することはありません。原因としては、急激な女性ホルモン(エストロゲン)低下など内分泌環境の変化に伴って症状が現れると考えられています。
超音波検査は高周波音波を利用して体内を視覚化する検査です。妊婦健診で行う超音波検査(エコー検査)は主に赤ちゃんの推定体重や羊水量、胎盤の位置をチェックします。赤ちゃんの骨格や内臓の状態など身体内部まで観察することができます。3次元動画像は、赤ちゃんの表情や動く様子をリアルタイムに観察することができます。あくびをする瞬間やまばたき、口を動かして羊水を飲んでいる様子なども観察できることもあります。
分娩監視装置(ぶんべんかんしそうち)とは、出産時に赤ちゃんとお母さんの健康状態をリアルタイムで確認できる医療機器です。主に、陣痛の強さや間隔(子宮収縮)と、赤ちゃんの心拍数(胎児心拍)をモニターで表示し、お産の進行状況や赤ちゃんの様子を医師や助産師が正確に把握するために使われます。
この装置を使うことで、赤ちゃんの心拍に異常がないか、陣痛が適切に進んでいるかなどを細かくチェックでき、万が一の異常にもすぐに対応できるため、より安全なお産につながります。
多くの病院・産婦人科クリニックで導入されており、初産の方や不安のある妊婦さんにも安心してご利用いただける設備です。
出生前検査は、赤ちゃんが持って生まれてくる可能性のある病気を診断する検査で、遺伝学的検査と形態学的検査があります。
当院では4D超音波診断装置を導入しています。
3Dの超音波画像に時間の要素を加えたものです。お腹にいる赤ちゃんの動いている様子を立体的に見ることができます。静止画だけではなく、動画の録画もできます。
いいえ、4D超音波診断も超音波を利用して体内の様子を観察します。レーダーや魚群探知機の原理と同じです。プローブと呼ばれる探触子をお腹にあてて超音波を体内に送り、反射して帰ってきた微弱な超音波を捕らえて画像化します。
従来の超音波画像で使われている白黒の表示と比べて、金色は見た目に美しく、また立体的に描写するのに必要な影やハイライトをきれいに表現することができるからです。
※4Dは赤ちゃんの向きによって見えないこともあります。